バイアグラという薬の名を、聞いたことのない中高年はいないと言っていいだろう。ある年代になって勃起しなくなった人や、勃起力が弱くなった人を救う薬として、一九九九年に日本でも認可され一躍有名になった(ED=勃起不全という言葉もこのときから広まった)。誰もが知っているのに「バイアグラが世界でもっとも売れなくて、製薬会社のフアイザ一ががっかりした」と言われるのが日本である。
もともとこの薬は、狭心症の治療薬として開発されたものだ。血管拡張作用が心臟よりも陰茎に対して強力に働いたため、EDの治療薬として世に出たのである。
ところがバイアグラの作用は、それだけではなかった。最近、血管内皮機能も高めることが注目されているという。要するに、血管の内皮が正常に筋肉のような形で動く働きをさせるので、動脈硬化を起こして流れの悪くなった血管の若返り作用があるというのだ。
この話を教えてくれたのは、私の東大の同級生である順天堂大学医学部の堀江重郎教授である。「血管が若返るから、和田さんも飲んだほうがいいですよ」と勧められた。
飲み続けると血管が若返って、さまざまな体の機能も改善する。たとえば耐糖能(上昇した血糖值を正常に戾す能力)が向上したり、酸化ストレス(生体内で活性酸素種の生成と消去システムのバランスが乱れ、活性酸素種が過剩になる状態)を減らしたりといった効果があるそうだ。
そのためには、セックスの前にだけ飲むのではなく、パイアグラより長時間作用があるシアリスやレビトラという薬を一日一回から二日に一回程度の頻度で飲み統ける必要があるのだが、問題は高価なことだ。一錠一五〇〇~二〇〇〇円程度するから、月に三~四万円かかることになる。動脈硬化に効果的な薬は少ないから、動脈を若返らせる薬は魅力的だが、本来が連用する薬ではないから高くつく。
とはいえ、血管が若返って性生活も充実するわけだから、当てにならない強壮剤や老化予防を謳う健康食品に大金をはたくくらいなら、ずっと効果的だと思う。
バイアグラは、狭心症にかかって二トログリセリン製削を飲んでいる人が、一緒に飲むと心停止になるような副作用の面ばかりが報道されたが、老化防止についてはまったくと言っていいほど知られていない。
がまんすることが美徳の国では、パイアグラは享楽的で退廃的な薬だというイメ-ジがあったことも否定できない。それだけに悪い情報が流れやすかったのだとも思うが、性機能以外も若返ることは、もっと知られてもいい